測温抵抗体の測定原理、
種類、特徴、結線方式について

「測温抵抗体センサ」は、高い精度と安定性から主に産業分野で使われてきた歴史ある製品です。昨今、持続可能な社会活動やEUのエコデザイン指令の改訂を背景に、産業分野から家電、民生製品等への活用が広がりつつあります。今回は、活用が広がる「測温抵抗体センサ」の測定原理、種類、特徴、結線方式についてご説明します。

白金測温抵抗体とニッケル測温抵抗体

1.他の温度センサとの比較

項目 測温抵抗体 熱電対 サーミスタ
精度 高い 低い 低い
安定性 高い 低い 低い
使用温度範囲 広い 狭い 狭い
価格 高い 安い 安い
応用分野 精度が必要な場合 精度がそれほど必要でない場合 安価で簡易な温度測定が必要な場合

2.測温抵抗体の測定原理

測温抵抗体は、金属や半導体等の電気抵抗が温度によって変化する特性を利用したものです。金属は主に白金、ニッケル、銅が使用され、温度が上昇すると抵抗値が増加します。工業用では使用温度範囲が広く、抵抗温度係数が大きい白金測温抵抗体が多く利用されています。代表的な Pt100 の規準抵抗値表を図1に示します。現行の JIS C 1604 では 100℃ と 0℃ の抵抗の比が R100/R0=1.3851 で国際規格(IEC 60751)と整合されたものが採用されていますが、日本独自の規格である R100/R0=1.3916 のものが現在も使用されています。

Pt 100の規準抵抗値表

温度(℃)  0  1  2  3  4  5  6  7  8  9  10   温度(℃) 
0 100.00 100.39 100.78 101.17 101.56 101.95 102.34 102.73 103.12 103.51 103.90 0
10 103.90 104.29 104.68 105.07 105.46 105.85 106.24 106.63 107.02 107.40 107.79 10
20 107.79 108.18 108.57 108.96 109.35 109.73 110.12 110.51 110.90 111.29 111.67 20
30 111.67 112.06 112.45 112.83 113.22 113.61 114.00 114.38 114.77 115.15 115.54 30
40 115.54 115.93 116.31 116.70 117.08 117.47 117.86 118.24 118.63 119.01 119.40 40
50 119.40 119.78 120.17 120.55 120.94 121.32 121.71 122.09 122.47 122.86 123.24 50
60 123.24 123.63 124.01 124.39 124.78 125.16 125.54 125.93 126.31 126.69 127.08 60
70 127.08 127.46 127.84 128.22 128.61 128.99 129.37 129.75 130.13 130.52 130.90 70
80 130.90 131.28 131.66 132.04 132.42 132.80 133.18 133.57 133.95 134.33 134.71 80
90 134.71 135.09 135.47 135.85 136.23 136.61 136.99 137.37 137.75 138.13 138.51 90
100 138.51 138.88 139.26 139.64 140.02 140.40 140.78 141.16 141.54 141.91 142.29 100

JIS C1604 より抜粋(単位:Ω)

3.測温抵抗体の種類

測温抵抗体には概ね下記の4種類があります。

種類 測定範囲
白金測温抵抗体 -200 ~ +800℃
銅測温抵抗体 0 ~ +180℃
ニッケル測温抵抗体 -200 ~ +300℃
白金・コバルト測温抵抗体 -272 ~ +27℃

白金測温抵抗体

温度による抵抗値変化が大きく、安定性と精度が高いことから工業用計測に最も広く使用されています。

銅測温抵抗体

温度特性のばらつきが小さく、安価で製造可能です。白金測温抵抗体に比べて精度が低いため、高精度な温度計測には適していません。高温で酸化しやすいので +180℃ 程度が使用上限温度になります。

ニッケル測温抵抗体

1℃ あたりの抵抗値変化が大きく、安価で製造可能です。白金測温抵抗体に比べて応答が速いため、高周波の温度計測に適しています。ただし、白金測温抵抗体に比べて精度が低いため、高精度な温度計測には適していません。

白金・コバルト測温抵抗体

抵抗素子に白金・コバルト希薄合金を使用したセンサで、極低温計測用に使用されます。

4.測温抵抗体の特徴

測温抵抗体センサは熱電対センサと比べて以下のような特長があります。

  1. 低温計測(常温付近)の温度測定に有利
  2. 安定性に優れている
  3. 精度が高い
  4. 機械的衝撃や振動に弱い
  5. 高価

5.測温抵抗体導線の結線方式

測温抵抗体を受信計器に接続する際、結線方式には2導線式、3導線式、4導線式があります。それぞれの方式により対応する受信計器側の測定回路が異なります。

2導線式

測温抵抗体と受信計器の距離が比較的近い場合に使用されます。配線費用が安価で済みますが、導線抵抗がそのまま抵抗値に加算されるため抵抗値の低い測温抵抗体には不向きです。比較的高抵抗の場合に使用されます。

2導線式

3導線式

工業計測用で一般的に使用される方式です。導線の抵抗が測定回路のブリッジの両側で相殺されるため、導線抵抗の影響をほとんど受けません。ただし、3本の導線の材質、線径、長さを同じにして導体抵抗が等しくなければなりません。

3導線式

4導線式

精密測定時に用いられる方式です。電流供給導線と電圧検出導線が独立しているため、導線抵抗の影響を受けることなく測定できます。

4導線式

6.測温抵抗体のパラメータ

測定電流(measuring current)

抵抗値測定のために抵抗素子に流す電流。JIS C 1604-2013 では測定電流を 0.5mA、1mA、2mA のいずれかと規定しています。

公称抵抗値(nominal resistance)

測温抵抗体の 0℃ における抵抗値で Pt100 の場合は 100Ω です。

測温抵抗体の許容差

日本工業規格「JIS C 1604-2013」では測温抵抗体の許容差として「クラス AA」、「クラス A」「クラス B」、「クラス C」の4つが規定されています。

JIS C1604:2013

許容差クラス 許容差が適用される温度範囲(℃) 許容差 a)
巻線抵抗素子 薄膜抵抗素子
AA -50 ~ 250 0 ~ 150 ±(0.1℃ +0.0017|t|)
A -100 ~ 450 -30 ~ 300 ±(0.15℃ +0.002 |t|)
B -196 ~ 600 -50 ~ 500 ±(0.3℃ +0.005 |t|)
C -196 ~ 600 -50 ~ 600 ±(0.6℃ +0.01 |t|)

※ a) |t| は、温度の絶対値(単位 ℃)。

測温抵抗体の許容差

0 ~ 100℃ の抵抗値変化の平均値で、下記の式で算出されます。R100 は 100℃、R0 は 0℃ での抵抗値を表しています。

$$α = {R100-R0 \over R0*100℃}$$

弊社では以下の通り、測温抵抗体温度センサとして白金抵抗体及びニッケル測温抵抗体を取り扱っていますが、サーミスタ、熱電対タイプの温度センサも取り扱っておりますので最適な温度センサを提案させて頂きます。

測温抵抗体温度センサ 取扱いメーカー
白金測温抵抗体 TE Connectivity
Honeywell Safety and Productivity Solutions
Innovative Sensor Technology
ニッケル測温抵抗体 Innovative Sensor Technology

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