
アイソレーションアンプ技術ノート(第2回)
第1回は、アイソレーションアンプの特長として、入力と出力が電気的に絶縁されていることと伝送帯域はDCからの帯域を持つこと(DC増幅器である事)の2点を説明しました。今回はアイソレーションアンプの絶縁構成、絶縁耐圧、及びそれに付随したノイズ除去について説明していきます。

1.絶縁構成
- アイソレーションアンプには、入力部と出力部の回路を動作させるための電源が必要でこの電源についても絶縁されていることが必要です。
(図1参照)
図1
- アイソレーションアンプは用途により「入力絶縁タイプ」、「出力絶縁タイプ」更に、入力部と出力部が共に絶縁されている「3ポート絶縁タイプ」に分類されます。(図2参照)
1) 入力絶縁タイプ
- 回路電源供給部/出力部からみて、入力部が絶縁されているタイプ
図1における信号絶縁部、電源絶縁のⓐ部が絶縁されている。 - 入力部、出力部の間に高電圧が印加されても正常動作する。
2) 出力絶縁タイプ
- 回路電源供給部/入力部からみて、出力部が絶縁されているタイプ
図1における信号絶縁部、電源絶縁のⓑ部が絶縁されている。 - 入力部、出力部の間に高電圧が印加されても正常動作する。
3) 3ポート絶縁タイプ
- 電源から見て、回路電源供給部、入力部、出力部がすべて絶縁されているタイプ
図1における信号絶縁部、電源絶縁のⓐ部、ⓑ部がいずれも絶縁されている。 - 入力部、出力部、電源部の間に高電圧が印加されても正常動作する。
図2
当社のアイソレーションアンプシリーズは、全て絶縁電源を内蔵しています。
絶縁電源(図1の回路電源供給部)については、第3回(次回)、各絶縁タイプ(2ポート、3ポート)の使用方法については、第4回で説明します。
2.絶縁耐圧
各ポート間の絶縁耐圧は、通常50Hz/60HzのAC電圧で規定し、絶縁耐圧電圧としては1kVACrms~ 2kVACrmsが一般的です。
当社では高耐圧用として、4kVACrms以上の製品もラインアップしています。
DC電圧での耐圧は規定されていませんが、短時間であれば(+)電位、(-)電位共に、AC耐圧規格の$\sqrt {2}$倍の電圧に耐えられます。(ACの場合のピーク電圧は、定格の$\sqrt {2}$倍)
但しDCの場合、コロナ放電が一旦起きるとACとは異なり、連続放電となり絶縁物の劣化を引き起こすため、DCでの連続印加は、ACの絶縁耐圧定格よりも低めに設定する必要があります。
DC電圧を印可する時の設計目安は、以下の通りです。
- DC短時間印加電圧: AC最大耐圧定格×$\sqrt {2}$ /5分以内
- DC連続印加電圧: AC最大耐圧定格×0.8 /連続
(例:AC耐圧2kVACrmsの製品: DC±2.8kVDC /5分間、 DC±1.6kV/連続)
3.ノイズ除去
アイソレーションアンプは通常のアンプと異なり、大きな同相ノイズ(コモンモードノイズ)を除去する事も可能です。
- 図3に、入力絶縁型アイソレーションアンプの例を示します(出力絶縁型は、入力/出力の関係が逆になるだけで同様です)。
- 入力側と出力側が絶縁されているため、入力側接地と、出力側接地を分ける事ができこの間に絶縁耐圧の定格以内までの大きな電位差やノイズ(En)があっても正常に動作し出力信号は変化しません。
- Enをコモンモードノイズあるいはコモンモード電圧といいます。コモンモード電圧が出力信号に影響が出ないということは、コモンモードノイズを除去できるということです(但し、入力に乗る差動ノイズを除去する働きは無く、通常のアンプ回路と同等です)。
図3
入力GNDは、GNDと絶縁されており、GNDループは形成されない。
次回(第3回)は、DC信号まで伝送できる当社のアイソレーション・アンプモジュールの技術概要について説明していきます。